居酒屋などで酒を飲んでいると、平均して年に8.7回はオナニーの話になる。そしてその際、同じテーブルに女性の方がおわしますと、一定程度の確率で 「男の人って(オナニーするのも)仕方ないんだよね?w」 というようなことを言われる。この論調は 『どうして男は彼女がいるのにオナニーをするのか?』 という議論に取り組んでいるとき、より一層顕著に現れる。 さて、彼女持ちのメンズがオナニーをすることは本当に 『仕方ないよね、男だしw』 なのだろうか。   ここで少し "仕方ない" という言葉の定義を確認しておきたい。 ■ しかたない 【仕方無い】 (1)する手段・方法がない。 (2)どうにもならない。困ったものだ。 (3)やむをえない。 (4)たえがたい。がまんできない。 (goo辞書 より引用) つまり 「男の人はオナニーしても仕方ないよね(暗黒微笑)」 などと仰っている方々は、我々メンズがオナニーをカマす主たる理由は  (1)(主にセックスなどを)する手段・方法がないから、している。 (2)(日々の生活などが)どうにもならない、困ったものだから、している。 (3)(本当はセックスをしたいのだけれど)やむをえないから、している。 (4) (この不況の中、賃金をカットされ風俗などに行けないことが)たえがたい、がまんできないから、している。あるいは(男の社会には『オナニーも出来ない男は益荒男たり得ない、大和男子として失格である』という通念が存在し、結論としてオナニーをしないと男コミュニティからハブされることとなり、かつ、皆そのことが)たえがたい、がまんできないから、している。 この辺りにある、とお考えになっているのであろう。その想い、理解できないこともない。 しかし、男として生まれて今年で26年になる僕から言わせてもらえば、上述したいずれの解釈もどこかピントがズレている。野球解説風に表現すれば "芯を外している" 。あるいは、『花の慶次−雲のかなたに』 に登場する直江兼続の言葉を借りれば 「利いたふうな口をきくなーー!!」 ということになる。 「男の人は (恋人がいてもオナニーするのは) 仕方ないんだよねw」 深い理解と器の大きな優しさを感じさせる言葉だと思う。あるいは、『男のオナニーを容認してくれているのに、この男は何をキャンキャンと……肉欲、地獄に堕ちろ!』 という声もあるかもしれない。 しかしながら!人には、いや男には、否、僕には "譲れない一線" というものが存在しており、その意味からすれば女性の方々に軽々しく 『オナニーは仕方ないんだよねw』 と片付けて欲しくはコレ、ないのだ。 なぜ我々がオナニーをするのか?この問いに対する明確な答は未だお目にかかったことがない。確かに我々は、別段オナニーをしなくても死ぬわけではない。それでも僕たち男は思春期の頃にオナニーを覚え、終生をオナニーと共にしていく。 オナニーという行為の背後にある哲学、もしくはロマン、それは人それぞれだろう。僕たちは各々別個の動機でオナニーをしている。ここで大事なのは、とにかくも僕たちはオナニーをする、というその事実だ。 好きな人が出来ても彼女が出来ても、あるいは結婚しても娘・息子が産れても、僕たちはオナニーをする。もちろん僕は未婚であるが、結婚後もシコシコとオナニーをしている自分の姿はかなり鮮明、かつ生々しく想像ができる。歳は40代、鼻セレブを用いてオナニーを行っている僕の姿。ありありと瞼の裏に浮かんでくる。イヤだが。 「……まあでも、それも仕方ないんじゃない?子供とか産れたら、昔みたいにセックスすることも出来ないワケだし」 そのお心遣いは有難いものの、無用だ。そろそろハッキリ申し上げておくが、男は、いや僕は、生まれてからこれまで一度たりとも 「仕方ねぇなあ……」とか 「しのびねえなあ……」といったマインドでオナニーをしたことは、ない。断言できる。僕のオナニーはいつも漲るエナジー&パッションと一緒に在ったし、それはこれからも変わることはないだろう。 Just for Onany (ただ、オナニーだけを) オナニー。それは代用品などでは、代替的行為などでは、決してない。オナニーの、オナニーによる、オナニーのための、オナニー。何だかよく分からないが少なくとも僕にとってのオナニーはそういう位置づけになるし、そうであればこそ女性側には涼しい顔で 「恋人がいても、男の人がオナニーするのは仕方ないんじゃん?^〜^」 みたいなことを放言して欲しくはない。その言葉の裏には、どこか 『男って性欲が抑えられないから、まあオナニー程度はしょうがないっしょ』 というニュアンスが感じ取れるからだ。 違うのである。いや、確かにどうしようもない性欲の高ぶりを感じる日もあるし、そういう日を選んで僕たちがオナニーをカマしている事実は認める。その意味からすれば、仰る通り 「男は仕方ない」 のかもしれない。 だ、が。僕の想像によれば、この文脈での "仕方ない" という言葉は 『性欲が高まっているのに、何らかの原因があって恋人とセックスができないから、オナニーするのも仕方ない』 という風に使われていると思われるのだけれども、率直に言ってそれは正しくない。なぜなら 『恋人とセックス出来るのに、何だか独りでオナニーがしたくなっちゃう火照った夜揺れるハート』 というものは、確実に存在するからである。言わばそれは "仕方ない" とかそういうレベルじゃない、とにかくもうオナニーがしたい、したくてしたくてたまらない!させれ!な晩のことだ。そんな夜、僕だって何度も経験してるのである。 そして、そんな夜。 我々メンズの脳内から彼女の存在はデリートされる。 一顧だにしない、と言っても過言ではない。 静謐なる時間 孤高の空間 全裸の刻 ――物語が、始まる。 鍵を掛ける。 携帯電話の電源をオフにする。 ネピアをベストなポジションに配備し、ゆっくりとオカズをチョイスする。 狙うは隠しエロフォルダ 『海図』。 吟味に吟味を重ね、激戦を勝ち抜いた2GBのメスたちが僕(のチンポ)を待ち受けておられるのだ。このトキメキ、ワクワクさんにだって負けちゃいないさ。 [画像] (小さくも大きい海原が、そこにある) 男性の皆さんはもちろんご理解かと思うが、サイコーのオナニーを演出したいと考えた場合、直ぐにチンポへと着手するのは完全なる下策だ。肉は『腐りかけが一番旨い』 という。これはつまり醸す、すなわち "発酵" という作用が肉のうまみを増幅させるからなのだけれども、その意味からすれば我々も自身のチンポを "醸す" 必要があるといえる。 何も難しい技術を要するわけではない。世の中には様々な "醸し" 方が存在するが、僕の場合でいえば 『およそ2GBのデータを一通り眺めた後、頭の中でフルコースを組み立てる』 これが "醸し" の作業だ。この作業なくして高級な貴腐ワインの如きオナニーの味わいを演出することは、出来ない。 ここまで語ればもうお分かりかと思うが、こんな面倒な行程 (但し、我々は決してこれら一連の作業を 『面倒だ』 とは考えていない)を経てまでするオナニー、それは最早 "仕方なくやっている" というレヴェルを遥かに超越している。それそのものが目的であり、それだけで世界が完結する行為――それが僕たちのオナニー (この文脈での "オナニー" の発音は "wanna be" という英語のそれに限りなく近接することに注意されたい) なのだ。あだやおろそかに扱ってはならないし、ましてや 『オナニー?ああ、寂しい男がセックスの代わりにやってるんだよね』 という理解は、いただけないのである。 いつか、どこかで書いたことがあるが、もう一度だけ記そう。 "攻め" のオナニー ――つまりは、そういうことだ。仕方なく行うオナニーなど、この世には一つとして存在しない、ノン、してはならないのである。お分かり頂けただろうか。 「じゃ、じゃあ彼女持ちの人がカマしているオナニーって……それってもしかして……」 事ここに至っては、最早 「すまない……」と謝罪する他ありますまい。認めよう、僕たちメンズは、あるいは僕は、彼女と行うセックスと、右手と行うセックスとに、それぞれ 『違う味わい』を見出している――という事実を。セックスはセックス、オナニーはオナニー、それぞれが別個の行為形式であるという揺ぎ無い真実を。僕はここに、声を大にして宣言したいのである。 その時に、さて、この日記を読み始める前までは 『男のオナニー?まあ仕方ないっしょw』と賢しい笑みを浮かべていたご婦人方、彼氏に向かってもう一度、アゲイン!同じセリフをぶつけることができるのでしょうか。できるのでしょうか!?鍵を掛けて、時間を止めて。PCのモニタ越しに 「マジでジョジュク(≒熟女)のAVはたまらんばい」と息を荒げている彼氏を、さあ、許すことができるのですかな?! 「う……う……でも、し……仕方ないんだよ……ね(;;)」 (シコッ……シコシコ……) 「う……や、いやあああ!!やっぱりダメぇ!!仕方なくなんてない、オナニーなんてしないでぇぇ!!しちゃダメなのぉぉ!!(;凵G)」 その言葉を待っていた。 そうなのである。 僕たちは……つーか?!僕ぁねぇ、自分たちが独善的にカマしているオナニーのことを 「ま、男は仕方ないよね」 何て風に、やけに冷静な口調で片付けて欲しくないのであります。変な理解をされるくらいなら、むしろ 『ダメッ!!オナニーするくらいならアタイがフェラしたるねん!!全部搾り出したるねん!!やる気、元気、井脇やねん!!』 という決然とした姿勢、あるいは生き様?と言いますかな、とにかくそういう熱いパッション、ないし彼氏のオナニーに対する名状し難い憤り、そういうものを目の当たりにしたいのです。そういう部分に愛を感じてしまうのですね、ええ、ええ……。 「じゃ、そういうリアクションをすれば、男の人はオナニーを止めるんですね?」 いや、するよ。普通に。心の中で 『すまぬ……すまぬ……!』と懺悔しながら、背徳感を全身で受け止めつつ、超ハードなオナニーを敢行すると思いますよ。もちろんそのことを敢えてまで恋人に告げるような真似はしませんが、心の奥底で (ごめん、俺……汚れっちまった……)と感じることはほぼ確実であり、その場合恋人に対していつもより優しく接することができるような気がする、そんな気がしないでもない、のですが、皆さんにおかれましては如何お感じかな。いいことづくめだと思いませんかな。思いますよね、当然。 ただ、我々の抱える上述したようなパッションを全て認識した上で 『それって結局 "仕方ない" ってことじゃんw』と仰るのであれば、おそらく正解だと思います。これ以上どんな説明を施してもそれは野暮に過ぎますし、詰まるところ『彼女がいてもオナニーをしたいから、してる』 という説明が最も無難でしょう。そのことを指して "仕方がない" と形容するのはごく自然なことです。 けれども、けれども。 再三になりますが、忘れないで下さい。 僕たちは決して、セックスの穴埋め代わりにオナニーをしているのではない……ということを。 いつもいつでも、"攻め" の姿勢でオナニーをしている……という生々しい事実を。 そこのところを無視したまま、どこかの誰かの言葉を鵜呑みにするようなテンションで 『オナニー?ああ、男は仕方ないらしいじゃんw』 と語ること、今日でおしまいにしましょう。それは僕から皆さんに向かって捧げる、本当にちっぽけな願い、あるいは、祈り。 なぜなら――僕たちは、自分のオナニーに誇りと矜持を持っているのだから。 持っているのだから。